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大阪高等裁判所 昭和60年(ラ)133号 決定 1985年6月11日

抗告人

藤本隆之

右代理人

酒井信雄

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一、本件抗告の趣旨と理由は別紙記載のとおりである。

二、当裁判所の判断

本件抗告理由は、要するに、本件競売申立にかかる不動産(以下「甲物件」という)の一番根抵当権者高島信用組合は、右物件の他に三筆の不動産(以下「乙物件」という)に共同担保権を有し、甲・乙物件の代価は前示組合の債権額を超えるので、甲物件の後順位根抵当権者で差押債権者たる抗告人は、甲物件の異時配当により、民法三九二条二項に基づき乙物件につき前示組合の抵当権を代位して行使できるところ、以上のような場合には、甲物件のみの最低売却価額で手続費用及び優先債権を弁済して剰余を生ずる見込みがないことは、民事執行法六三条にいう剰余を生ずる見込みのない場合に該当しないから甲物件の競売手続を続行しなければならない、と主張するもののようである。

しかし、民事執行法一八八条により不動産競売に準用される同法六三条の規定は、差押債権者に配当されるべき余剰がなく、差押債権者が執行によつて弁済を受けることができないのにもかかわらず、無益な競売がされるとか、また、優先権者がその意に反した時期にその投資の不十分な回収を強要されるというような不当な結果を避け、ひいては、執行機関をして無意味な執行手続から解放させることをその趣旨とするものであることに鑑みると、後順位債権者たる差押債権者に民法三九二条二項による代位の余地があることは民事執行法六三条一項所定の剰余の見込みを肯定すべき事由とならないこと明らかであり、以上に反する抗告人の主張は採用することができない。

そして、本件記録によれば本件は民事執行法六三条一項に該当するところ、抗告人において、所定の期間内に同条二項に定める申出及び保証を提供しなかつたことは明らかであるから、本件競売手続を取消した原決定は相当というべきである。

よつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官首藤武兵 裁判官奥 輝雄 裁判官井筒宏成)

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